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衰退したヨルバ信仰を再興した一人の女性芸術家

ART

西アフリカ、ナイジェリアのオシュン川沿いにあるヨルバ族の原生林。ここにヨルバ族が維持する巨大なスピリチュアル アート展「オシュン=オショグボの聖なる木立」がある。

衰退しかけたその聖なる木立を再興へと導いたのは、一人のオーストリア人女性芸術家であった。

オシュン=オショグボの聖なる木立

この「オシュン=オショグボの聖なる木立」はナイジェリア、オシュン州の州都オショグボにある、ヨルバ族にとってとてもスピリチュアルな原生林だ。ここにあるオシュン川は豊穣の女神オシュンに由来している。

ヨルバの神話ではオシュン川はこの女神が姿を変えたもの、その川沿いの原生林は女神オシュンが住むとされ、そこに祭壇を建て祀ることで、人々は恵みを受け取れると信じられてきた。

(伝統的なヨルバの神に花や食べ物、薬草などがお供えされている)

しかしイギリスがナイジェリアに入植、それまでの土着の宗教は、ほとんど宣教師によってキリスト教へと改宗された。そして生活が欧米化し、都市に住むというライフスタイルに変わった為、人々の信仰心は自然から離れていき、この「オシュン=オショグボの聖なる木立」は衰退の一路を辿る。オシュン川流域の豊かな動・植物相の中、いつの間にか祭壇は原生林の中へ飲み込こまれそうになっていた。

オーストリア人女性芸術家 スザンネとヨルバ信仰との出逢い

1949年ウィーンで芸術を勉強したスザンネ・ヴェンガーはパリへ旅に出る。そこでドイツ人の言語学者のウリ・ベイヤーと出会い、恋に落ちる。その後ウリは音声学の仕事でナイジェリアのイバダンという場所へ行くことになる。それに付き添うため、彼らは結婚を決めた。

ウリは学者として、そしてスザンネは芸術家としてすぐにこのナイジェリアの地に順応するが、1950年エデという町に移動することにした。そこでスザンネは一人のオシュンの聖職者と出会うことになるのだ。そして彼の人生に興味を抱く。

その頃の聖なる木立は既に衰退の一路を辿っていたため、その姿は現在のような姿ではなかった。それでもスザンネはこの神秘のこの原生林と、先祖の作ったこの壮大なアートに心を惹きこまれたのだ。その後、彼女は言語学者のウリと離婚し、一人このオシュン=オショグボに残るのだ。

彼女は単身アフリカの原生林で夢中になってこの壮大なアートを再興することに情熱を注いだ。
情熱が情熱を呼び、この聖なる木立はいつしか芸術家の集まる場所と変わっていた。そしてヨルバ信仰者の信仰の中心となった。
人が集うようになり、オシュン=オショグボの聖なる木立は蘇った。

そして毎年8月には女神Osunを祀る祭りが行われ、今では何千人もの信者がこの地を訪れるようになった。

(8月に行われるフェスティバル。聖なるオシュン川に触れ、聖水を飲む。)

この彼女の全身全霊を打ち込んで再興したヨルバ信仰のオシュン=オショグボの聖なる木立。彼女はその実績を認められ、ヨルバ信仰の高い地位を受けた女性聖職者となる。もちろん前例のない外国人聖職者であった。

しかし、次第にキリスト教とイスラム教の原理主義者から批判を受けるようになる。しかし彼女は批判する彼らに、こう言ったのだ。
「Orisa(神)は、超自然の威力の名前に過ぎないの。なんと呼ばれていようと問題ではないわ。それは神聖な威力であり、人間を形取る人生の知恵なのよ。」

彼女は自分の信じているものと、相手の信じているものが同じだと言いたかった。
キリスト教もヨルバもそしてイスラム教も、信じているものは同じなのだ。

そして彼女はナイジェリアのブーゲンビリアの蔦が這う美しい彼女の家で暮らし続けた。彼女への忠実心から彼女の元にはたくさんの巡礼者が訪れたという。そして2009年12月、スザンネ94歳、その神秘と情熱に溢れた長い人生を終えたのである。

ユネスコ世界遺産に認定

2005年、ユネスコによって世界遺産と認められたこのオシュン=オショグボの聖なる木立。
彼女は他宗教から、このヨルバ信仰を守りたいと思っていた。そして、このオシュン=オショグボを、観光客の目に晒されるのも嫌ったという。

旅行へ行く時に、寺院や教会、モスク、または民族の聖地などに足を踏み入れることがある。
例え自分に信仰心がなくても、そこが信仰者にとって聖なる場所であることを忘れたくない。例えガイドブックに載っていたとしても、聖なる場所は決して“観光地”ではないのだ。

興味本位で見物しに行くのではなく、彼らが崇める神様に自分も触れるような気持ちで訪れたいものだ。そうでなければ失礼であるし、また行く意味もないだろう。

スザンネの情熱が動かした聖なるムーブメント。ヨルバ族は自らの信仰と、この聖なる木立を取り戻した。
もしかすると彼女の魂は、オシュン川の豊穣の女神オシュンに呼び寄せられたのかもしれない。

そしてこれからも女神はますますヨルバ族の暮らしにお恵みを降り注ぐことであろう。

参考サイト

Writer: バンベニ桃

 
 
 
 

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