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働く女性の先駆けだった?!「ピーターラビット」の作者

ART

ビアトリクス・ポター 《素描「ピーターラビット」》 
英国ナショナル・トラスト所蔵

世界で一番有名なうさぎ「ピーターラビット」。今年はピーターラビットの作者ビアトリクス・ポター生誕150周年記念の年だ。女性が働くことが当たり前でなかった時代に、彼女が自らの道を切り開いていった半生を少しだけご紹介したい。

ビアトリクス・ポター肖像写真 Courtesy of the Victoria and Albert Museum

1866年ロンドン、ビアトリクス・ポターは綿織物で財を成した裕福な中流家庭に生まれた。幼少期から自然や動物たちの美しさを深く愛していた彼女は、都会ロンドンを離れ夏の間過ごした祖父の屋敷やスコットランドで、動物たちの世話、植物や昆虫の採集、自然や動物のスケッチに情熱を注いだ。

ビアトリクス・ポター 《『ベンジャミン バニーのおはなし』の挿絵のための水彩画》
英国ナショナル・トラスト所蔵

働く女性のパイオニアとして味わった苦悩

絵の才能を徐々に発揮していくポター。しかし、当時は女性が働くことに理解がなかった時代。娘がグリーティングカードや本の挿絵でお金を稼いでいることを両親は快く思わなかった。だが彼女の好奇心は止まらない。その後彼女は緻密な植物の観察とスケッチを通して、徐々に植物学にも興味を抱くようになる。彼女の研究者としての観察眼はなかなかのもので、当時まだ手付かずだったキノコの特性で新たな発見をするという仕事を成し遂げた。けれどまだ若くしかも女性であるポターに周囲は冷たく、学会に出席するもことは叶わず、ポターは植物学者としてのキャリアもあきらめざるを得なかった。

ビアトリクス・ポター 《私家版『ピーターラビットのおはなし』》
英国ナショナル・トラスト所蔵

「ピーターラビット」の誕生と出版

誕生のきっかけは、ポターの最後の家庭教師だったムーア夫人の子どもたちとの手紙の中に、イラスト入りの小うさぎたちの物語を書き贈ったことだった。絵手紙は子どもたちから大好評で、ポターはその小うさぎたちの物語を本にしてみようと思いついたのである。悲しいことに何社もの出版社をあたって本の話をしたが、どこにも受け入れてもらえなかった。しかしポターはそこであきらめなかった。自費出版に踏み切ったのである。1901年、その後世界中の人々から愛される『ピーターラビットのおはなし』の本が誕生した。

ビアトリクス・ポター 《『ベンジャミン バニーのおはなし』の挿絵のための水彩画》
英国ナショナル・トラスト所蔵

絵本のヒットに隠されていた出会いと別れ

その後美しく彩色されたポターの絵本は正式にフレデリック・ウォーン社から出版され大ヒットする。その絵本の出版を通してポターは、編集担当のノーマン・ウォーンとの仲を深めていき、その後正式にプロポーズされる。けれども幸せは長く続かなかった。家柄を理由に両親からウォーンとの結婚に反対される中、ウォーンは突然急性白血病で倒れプロポーズしてからたった1か月でこの世を去ってしまったのである。深い悲しみに突き落とされたポターだが、仕事熱心な彼女らしく絵本の制作にますます力を注いでいく。

「じぶんのたまごはじぶんでかえしたい」~ポターの揺れる想い

研究者の猪熊葉子は、そうした数々の試練やノーマンとの別れを経て、ポターの作品にも変化が訪れたと指摘している。例えば、『あひるのジマイマのおはなし』に出てくるあひるのジマイマは、他ならぬポターその人を思わせる。
自分で卵を孵すことを許されないジマイマは、「じぶんのたまごはじぶんでかえしたい」と願い、卵を産むことのできる場所を探しに行く。けれどジマイマと卵を狙うキツネに騙されて、ジマイマは卵を産んだまま小屋に閉じ込められてしまう。絶体絶命のところへ、不審に思った犬のケップが仲間を連れてやってきて、キツネを追い払ってくれる。ジマイマは助かるが、犬たちに卵は全部食べられてしまうのだった。
『あひるのジマイマのおはなし』は有名な作品の一つだが、こうした女性として苦悩しながらキャリアを追求してきたポターの半生と当時の状況を重ねながら「ジマイマはばかでした」と書くポターの姿を想像すると、物語からはまた違った景色が見えてくることだろう。

ヒルトップ農場 Photo/Sony Creative Products Inc.

ポターはその後ピーターラビットの収入で手にしたお金をもとに農場を買い取り、農場経営者としても才覚を発揮していく。長く独身だったが農場を買い取る際に力になってくれた事務弁護士のウィリアム・ヒーリスと結婚した。
「ピーターラビット」とその仲間たちの姿はとても愛くるしいが、ポターの生み出す作品はあくまでも自然の厳しさに満ちている。それは彼女が幼少期から続けてきた子細なスケッチと観察、そして周囲の理解をなかなか得られずに女性としてキャリアを求めたポターの人生が反映されているのだろう。

ビアトリクス・ポター生誕150周年記念「ピーターラビット展」

現在そんなポター生誕150周年を記念して、Bunkamuraザ・ミュージアムで展覧会が開催されている。イギリスに訪れる時間がない人でも、ポターの愛した田園風景と動物たちを存分に楽しむことができるので、ぜひ足を運んでみよう。

参考文献:猪熊葉子『ものいうウサギとヒキガエル:評伝ビクトリアス・ポターとケニス・グレアム』
東京・偕成社、1992

「ピーターラビット展™」
【会場】Bunkamura ザ・ミュージアム(JR渋谷駅ハチ公口より徒歩7分)
【期間】8月9日(火)~10月11日(火)※会期中無休
【開館時間】10:00~19:00(入館は18:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
[問い合わせ]ハローダイヤル 03-5777-8600
展覧会URL:http://www.peterrabbit2016-17.com/

・福岡
会期
2016年10月28日(金)~12月11日(日)※休館日:毎週月曜日
会場
福岡県立美術館
開館時間
10:00 ~ 18:00(入場は17:30まで)

・仙台
会期
2016年12月20日(火)~2017年2月1日(水)
会場
TFUギャラリーミニモリ

・大阪
2017年2月~4月

・広島
2017年4月~6月

・名古屋
2017年9月~11月

Writer: Yuka Takahashi

 
 
 
 

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