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手塚治虫、宮崎駿も憧れた。「メビウス」

ART

Photo by ログ速

以前、「BD(バンド・デシネ)」というフランス語圏の漫画作家をご紹介した。

以前の記事はこちら

フランスでは漫画はアートという認識もあるという。
世界で注目が集まっているフランス語圏の漫画だが、「BD」を語る上で避けては通れないのがメビウスだ。

メビウス=ジャン・ジロー

メビウスとはフランスの漫画家である。残念ながら2013年に73歳で亡くなった。彼は作家として活動する際に二つの名前を使い分けており、それがメビウスとジャン・ジローという名前である。ジャン・ジローは40年続いた彼の代表作「ブルーベリー」を書く際に使われた名前で、メビウスという名前はそれ以外のSF、ファンタジー作品を描く際に使われた。一般的にジャン・ジローで描くものは写実的でリアリズムを感じる絵柄であり、メビウスで描かれるものは自由で制約を感じさせない絵柄だと言われる。

フランスではジャン・ジローの名の方が一般的であるが、日本においては大友克洋や宮崎駿がメビウスから影響受けたと公言していることから、メビウスのが有名である。

さあ、しのごのは置いておいて彼の作品をいくつか紹介しよう。

ブルーベリー

Photo byメモリの藻屑、記憶領域のゴミ
Photo by 138E

ジャン・ジローの名前で描かれた代表作「ブルーベリー」は西部劇ものの漫画。ジャン・ミシェル・シャルリエとの共作となっている。主人公ブルーベリーが飲んだくれの人でなしであり、さらにインディアンの味方という当時では珍しいハチャメチャな設定。フランスでは「ブルーベリー」の認知度が非常に高い。

アルザック

Photo by kaoru arima
Photo by BIRD YARD

アルザックはメビウスの名で描かれた、これも代表作として言われることが多い作品。
アルザックはほとんど会話のないストーリー漫画で、主人公が翼竜に乗り荒廃した世界を飛びまわるといった内容になっている。アルザックが登場した際にはフランス漫画界に革命を起こしたとまで言われ、世界中の漫画家が彼の絵柄を真似した。

宮崎駿の「風の谷のナウシカ」はアルザックの影響を随所に感じさせ、宮崎駿本人も「ナウシカは明らかにメビウスの影響によって作られた」とインタビューで語っている。
白い翼竜に乗る主人公とメーヴェに乗るナウシカが確かに重なる。

アンカル

Photo by PAUL RONCKEN

アンカルはカルト映画の巨匠アレハンドロ・ホドロフスキー原作、画をメビウスが手がけた漫画。
私立探偵ジョン・ディフールがひょんなことから謎の生命体アンカルを手に入れ宇宙全体の命運を任される。壮大で難解なストーリーになっている。カラフルで美しい絵柄が目を引く。

映画のスペースオペラがスターウォーズなら漫画のスペースオペラはアンカルだと評される。

B砂漠の40日間

Photo by キナリノ

B砂漠の40日間はメビウスのドローイング集。

ある日男が砂漠で瞑想を始める。そしてそこに現れる鮮烈なイメージの数々…。
セリフなどは一切ないがどこかストーリーを感じる作りになっている。

驚くべきことにここに描かれている絵はすべて、下書きも修正もなしの一発書きで描かれている。
ある記者に「なぜこんなことができるのですか?」と聞かれたメビウスは笑いながら「それは内緒です。秘密を明かすことはできません」と答えたそうだ。

世界、日本に影響を与えたメビウス

メビウスは自分の作品の他にも映画など様々な作品に関わっている。
有名なものが映画「トロン」の舞台、コスチュームデザイン、「エイリアン」の初期コンセプトと宇宙服のデザイン、「フィフス・エレメント」コンセプトデザイン。
特にフィフス・エレメントは色濃くメビウスの世界観が出ている。
都市が上へ上へと重なり、多くの人々が地上から離れた高い場所で生活していて、その建物と建物の間を空飛ぶ車が行き交っているという現在のSFでよく見られるあのイメージはメビウスが構築したものと言われている。

また多くの日本人漫画家が彼の影響を公言しており、宮崎駿、手塚治虫、大友克洋、松本大洋、谷口ジロー、浦沢直樹などなど言い出せばきりがない程だ。
手塚治虫にいたってはメビウスの陰影のつけ方の独特の線をメビウス線と名付けそれを自作に用いたことは有名な話である。
現在の日本の漫画、アニメはメビウスがいなければ成り立たなかったと言っても過言ではない。

全く新しい、想像力

彼の作品を見ていると人の想像力の限界について考えてしまう。
一体、人はどこまで想像することがきるのか?メビウスが描くイメージは全く新しいものばかりだ。今までなかったイメージをいくつも生み出している。そのイメージに多くの人が魅了されている。
彼を語る上で面白い話がある。

彼は若いころ、ジジェという1950年代後半に活躍した漫画家の元で一年間修行している。ジジェもまた素晴らしい作家でリアルな作風で知られていた。
ジジェの元に弟子入りし自然を見てキチッと描くや、筆を使って描くといったことを習うのだが、メビウスは一切言われたことをやろうとしなかったそうだ。
彼は物事というのは内側から描くのだという信念を持っていて、資料をあたりリアルな絵を追求するというものとは全く別のスタイルを、自分自身の独自の描き方を貫いたそうだ。しかしジジェとそっくりの絵を描けるようになってしまったという。

メビウスは自分の想像力を信じていたのだ。
自分の内側にあるものに確信を持っていた。
それがリアルにも劣らないということに。

データではなく、どう感じるか

最近「データ」という言葉をよく聞く。
「その企画を裏付けるデータはあるのか?」「データがないんじゃ信用がないな」確かにデータは大切だ。
データを見ればある程度の見通しがつく、売れる、売れないといった判断を下すには格好の材料だ。

しかしその結果ハリウッドではリメイク、続編が多くなり、日本映画も漫画原作が話題だ。一度売れたものというデータがあるものは商品化しやすいのだろう。
もちろんリメイク、続編を待ち望んでいる多くのファンがいる、それ自体が悪いことだとは全く思わない。しかし寂しくもある。
以前話題になったものがもう一度ではなく、全く新しいものが話題に上がって欲しいと考えている自分がいる。

メビウスはこうも語っている。
「世の偉大なアーティストたちはどう感じるかを大切にして作品を作ってきたのではないかとも思うのです」

「どう感じるか」そんなことは全くもって論理的でない。
しかしそんな自分の内側を信じることができれば人は大きく前進することができる。
データという前例やリアルではなく、どう感じたかを信じることができれば、自分の内側に一歩を踏み出すことができれば、そこにはまだ誰も見たことがない、美しく、広大で、鮮烈な世界が広がっている。

メビウスの作品を見ているとそんなことをつい、思ってしまうのだ。

Writer: Takato Tada

 
 
 
 

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