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波乱万丈!米国でホームレスから漫画家の道へ

PEOPLE

Photo by koki sato

「イケメンだーい好き!狙った男は必ず落とすの、今のところ百発百中」と、ずり落ちる大きな眼鏡をひょいっと上げてにんまり。
裏表のない大胆な発言と、その飾らない人柄が清々しい。

ミサコ・ロックス。米国で唯一の日本人漫画家だ。

昨年の秋、自身の実体験を綴った『理由とか目的とか何だっていいじゃん!チャレンジしなくちゃ後悔もできない!ニューヨーク流自分を解き放つ生き方』を出版。
結婚、離婚、ホームレス経験を乗り越えた彼女が、米国で生きていくための方法を指南する。

米国で漫画家として生きていく決意を固めたのは、30歳。

その夢を実現させるために全力で駆け抜けてきた。
獲物を見つけたら一直線に走り出すチーターのように。



ハンターの血が騒ぐ

Photo by koki sato

米国で日本の漫画が人気なのはご存知の方も多いだろう。
それらのほとんどは、まず日本で絶大な人気を誇り、海外進出してきた作品だ。

しかし、漫画家として一からスタートし米国を土壌に活躍している日本人女性がいるという。

ミサコ・ロックス。
黒々としたストレートヘアに「アラレちゃん」風の黒ぶちメガネで現れた。

「日本人のミサコだって一発で覚えてもらえるから」と笑いながら自身の風貌の真相をぶっちゃける。

「狙ったものを落とす」

この言葉はまさにミサコの人生そのものだ。
何かを「手に入れたい」 と思ったとき、リサーチから導く戦略力と、計画的な実行力はずば抜けている。

彼女の確実にモノにする力を「ハンティング“力”」とでもいおうか。
今、彼女のコミック作品はさることながら、彼女の人生が日本でも熱い視線を浴びている。



王子さまに導かれた米留学

Photo by koki sato

埼玉県生まれ。両親は警察官という家庭で、普通に「リボン」などの漫画雑誌を読んで育った。
小学校低学年、いじめにあい、友達は一人ぐらいしかいなかった。よくハリウッド映画を観て過ごしていたという。

その頃、ある映画が、ミサコの人生を変えた。

米国の俳優マイケル・J・フォックス主演の映画『バック・トゥー・ザ・フューチャー』だ。
マイケルが、高校でいじめにあいながらも、タイムマシン「デロリアン」で、過去に戻り、両親の運命を一変させ、自らもお目当てのガールフレンドをものにする、というストーリー。

いじめられていたマイケルの姿と自分が重なった。

また、制服がなく、お洒落で自由な服装や米国の開放的な高校生活にクラクラした。
「ザ・アメリカンって感じのマイケルがかわいくて。恋に落ちました」

以来、マイケルに会うため、米国に行くことしか考えなくなった。
会えるか会えないかはともかく、ミサコは本気だった。

留学する方法を「研究する」ため、中学生にして大学の情報を求めて、赤本を読みあさった。
すると、法政大学に1年間、米国への学費・留学費を出してくれる制度があるのを発見。
そこで、同大学に「推薦入学」をするため、自身の実力より偏差値が低い高校に入学した。
3年間、学年トップの成績を維持しようというワケだ。

この頃からミサコはリサーチ力と戦略的思考に長けていた。その後、晴れて同大学に入学し、ミズーリ州への留学を果たすことになる。
「生まれて初めて、目標を達成した高揚感があった」

効果バツグンの電話掛けテクニック

Photo by koki sato

しかし、留学は1年で終わった。
「また米国に戻りたい」。

そんなことを思っていた頃、ミサコはミュージカル『ライオン・キング』を東京で観て、あることを思いつく。

「ブロードウェイみたいな世界があるんだ。ブロードウェイの人形の操り師になりたい」。そう思い立ったら、ミサコのハンティング“力”は全開。

バイトをして旅費をため、時差があるにも関わらず電話で、あらゆるニューヨークの劇団にアプローチした

なぜ、電話か。
それは彼女が、人間関係は人間味あるアナログのコミュニケーションでしか築けない、と信じているから。

今でもメールでの売り込みはしない。
電話の前で手鏡を持ち、相手が目の前にいるかのように微笑みかけ、それから電話する。
用件は手短に、電話は2分以内で切るのが目標。

1年後、小さな劇団で人形師のインターンシップを獲得し、ニューヨーク行きの切符を掴んだ。
今でも、この「電話セールス力」で仕事を「もの」にするスタイルは変わらない。



ホームレス生活で体に意外な現象が起こる

Photo by koki sato

ところが、念願の渡米後の 2001年9月11日、米同時多発テロ事件が起こる。
休演続きとなり、収入は断たれた。

アパートからも追い出され、「ホームレス」生活を余儀なくされる。

「夜になると路上にベーグルが入った袋とか転がっているので、頭にライトをつけて、袋を開けたり、ゴミ箱をあさったりしていました。
たとえば、食べかけのサンドイッチとか見つけると、食べていない方からかじるとか。
そうやって、炭水化物ばかり取っていたので、体重が増えてまるまるとしてました」

とたんたんと、時に自虐的に話し笑いを誘う。

やがて、公園でよく見かるようになった同性愛者と仲良くなり、アパートをシェアしてくれることに。
ホームレス生活は約1ヶ月で終わった。

だが、その後も試練は続く。
2002年、イケメンミュージシャンと出会い結婚し、ウィスコンシン州マディソンに移り住む。
しかし、結婚生活はうまくいかなかった。

すれ違いと誤解の連続で、1年も経たずに、生涯の伴侶ではないことが明白となった。
離婚直前の心も顔も体もボロボロ、生活を支えるため七つものアルバイトをこなす生活。
ストレスで睡眠薬を手放せない日々が続いた。

その頃、思いがけないヒントが舞い降りてくる。
ウィスコンシン州の子ども博物館でバイトを していたとき。

小さな男の子が、『ドラゴンボール』の英語版を持っていた。
「図書館に行っ たら、日本のマンガがたくさんあるよー」と男の子。
実際に図書館に行くと、日本発のマンガがどっさり。田舎街の図書館でさえ、こんなに日本の漫画の需要があるならば..

「よっしゃ、マンガ描いてやろー」。

ミサコにハンター精神が再起した。30歳のときだった。

“コレだ!”を見つけたとき視力は 3.0 に

Photo by koki sato

それから、ミサコの「徹底研究」がはじまった。

図書館にあった日本のマンガと米国のコミックを全部借り、見比べる。

「日本のマンガは、線が細くて、精巧なタッチだけど、米国のコミックは、リアルでダイナミックな感じ」。
2種類の異なるタッチを、ミサコ流に合体できないかとひらめいた。

そこで、筆を使ってダイナミックさを出しながらも、漫画のような繊細さを出せないか、試行錯誤を続けた。

日本のマンガのように、目が大きく、繊細なところもあるが、展開の早さやシンプルな背景は、米国のコミックの特徴を取り入れ、独自のスタイルを生んだ。
それに加えストーリーは、米国で人気の高い書籍ジャンルの自伝に注目し、自身が体験したアメリカンライフを題材にしようと考えた。
研究と練習を続けるとともに、登場人物のプロファイル、ストーリーのポートフォリオを作り、それをもとにサンプルストーリーを作成した。

さらに、オンラインで出版社を探し、片っ端からプレゼンのアポを取るため、ミサコの得意とする「電話セールス力」でアプローチ。
アルバイトをしてお金を貯め、アポが入るとウィスコンシン州から出版社が集まるニューヨークに出向く。

コミックの研究と練習をはじめてから2年、多くの出版社の扉を叩き、サンプルページを見せて、ストーリーのプレゼンをし続けた。

そしてある日、大手ディズニー・ハイペリアン出版社でプレゼンをすると、『Rock and Roll Love』は、米国人学生と留学生の、今までにない恋愛ストーリーとして興味を示してもらい出版が決まった。

さらに、持ち合わせていたスケッチのラフから、向こう2作品の出版が決定するなど、トントン拍子で話は進んだ。
「アメリカは、物事が決まれば早いです」

今では同書はニューヨーク公立図書館が選ぶベスト・ティーンズ・ブックリストの一冊に。
その後、米国大手出版社ヘンリー・ホルトから初のシリーズ作をはじめ、英国の漫画雑誌への連載、アジア向けの英語教科書に採用されるなど、グローバルな活躍ぶりを見せている。

恋愛も抜かりなくハンティング!



Photo by koki sato

一方、プライベートでもミサコは持ち前の力を発揮。
どん底時代の七つのバイトを掛け持ちし ていた頃、スーパーマーケットの自転車置き場でクリリンことクリストファー・ジルキー、五つ年下の“イケメン”に出会う。

当時、自転車に買い物袋を積んでいると、隣のヴィンテージバイクにひげもじゃの彼が「すみません」と近づいてきた。

「その時、イケメンレーダーが作動したんです。こいつは『ダイヤの原石』だと。

それで、『今度遊ぼー』って電話番号を交換しました!」
ここでも長年研究を重ね培ってきた「ミサコ流ガイジン男子へのアプローチ法」で勝負。

見事にクリリンを“モノにした”。

離婚が成立した07年、ミサコがニューヨークに引っ越した際、クリリンも「同伴」し、以来、二人はブルックリンで暮らしている。
「まだまだクリリンを調教しないとねー」と目を鋭くさせたあと、ミサコは顔一杯に愛嬌をみせて笑った。

今、ニッポン人に必要な力

Photo by koki sato

現在、米国のコミック本のファンである小中学生以外にも、新しい読者層を開拓する計画中だ。

その第一歩としてオンラインコミックに踏み出した。
また、全米各地の小中高校や、大学、美 術館などのワークショップ以外に、日本でも活動を開始。
『もうガイジンにしました』(ディ スカヴァー・トゥエンティワン刊、2013 年)、『理由とか目的とか何だっていいじゃん!チャレンジしなくちゃ後悔もできない!』(同、2014 年)を出版したり、精力的な執筆活動などを通して、若い女性読者のファンを増やしている。

著書を読んだ25歳の日本人女性が、感銘してニューヨークに留学し、自分の服装も改造した。
すると、今まで彼氏がいなかったのに、あっという間にカフェでナンパされたという。

「日本人女性は、本当は自己主張をしたいんだと思う。きっかけが欲しい、と思いながらも、ちゃんとした目的がないと前に進めない人が多い。私はもうジャンプ・インしちゃう!だから、日本人女性にも、『いいんだよ、理由なんか、進んじゃいなよ』と背中を押してあげると、違う道が開けてくるんです」

おもしろおかしく自虐的に話す、軽快な語り口が買われ、今年1月末、日本の芸能事務所への所属が決まった。
ニューヨークをベースにしながらも、帰国した際は、メディアに出たり、講演会を駆け回る予定だ。

「人生を変えるきっかけを待っている日本の男女」の背中を押しまくる2016年となりそうだ。

これからも、ミサコ・ロックスは、黒ぶち眼鏡の下でくるくると動く大きな瞳で、誰よりも真っ直ぐに目標を見据え、走り続けていくのだろう。

※この記事は、HEAPSに2015年3月に掲載されたものを編集したものです。

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