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マンホールの底。”理想の生活”へようこそ。

ART

Photo from biancoshock.com

もしも帰る家を失ってしまったとしたら、あなたならどうするだろうか?ホテルに泊まる?実家を頼る?友達の家に転がり込む?では、それらも全て頼ることができなかったとしたら・・・?

赤錆びた蓋の底には・・・。

都市の喧騒から逃げるように辿り着いた街の外れ。赤錆びたマンホールを開けると、絵に描いたようにリッチな空間が現れた。使われなくなったマンホールにちょっとした魔法をかけたのは、イタリアを中心に活動する謎のストリート・アーティスト”フラ・ビアンコショック”だ。
ビアンコショックはアートワークの新シリーズとして「BORDERLIFE」というタイトルの下に、薄汚いマンホールの底に豊かな生活空間を垣間見せた。

Photo from biancoshock.com

都市に出現する、「束の間のアート」

ビアンコショックは自らの活動のコンセプトを「EPHEMERALISM(エフェメラリスム)」と称し、既に650以上もの作品を世界中の各都市のストリートに出現させている。EPHEMERALとは「つかの間の」「儚い」といった意味を持つ単語であり、ストリートに作られる作品はすぐに消えてしまう。

そしてそれを記録した写真やビデオもメディア空間にふと現れ、これもまたいつの間にか流されてゆく様は、まさに儚い夢のようでもある。私達が都市に生きる為に適応したあわただしい時間と空間に、ビアンコショックはユーモアで介入し、ささやかな気付きを与えてくれる。

Photo from biancoshock.com

“LIVE”,2014 枯葉で描かれた「LIVE」の文字。

 

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“MIRACULOUS CROSSING”,2016 この横断歩道がなければ、対岸を歩く2人が巡り合う前に夕暮れになりそうだ。

 

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“GRAFFITI PUZZLE”with VMD 70’s,2014 モナリザやガウディの作品のパズル、よく売ってるの見るね。

 

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https://www.youtube.com/watch?v=hj2b0RM-tiE

”Waste Machine”,2014 海岸はキレイに!

 

アートがもたらすオルタナティブな視点

Photo from biancoshock.com

”NO JOY”2016 「NO JOY」と題されたこの作品は、イタリアで最も普及しているカーシェアリングサービス「ENJOY」をもじった作品。「ENJOY」の目印は赤いボディに黄色と白のロゴだ。

 

Photo from biancoshock.com

カーシェアリング・サービス「enjoy」の赤い車
ビアンコショックは何気ない都市の風景の中にちょっとしたユーモアを混ぜる。社会風刺的ではあるが、強い批判を込めた刺激的な糾弾というよりは、ある問題に対するオルタナティブな視点をユーモアを込めて提示するところに彼の作品の特徴がある。この作品について、彼は何かある具体的な問題を批判しようとしたわけではなく、ただ、「より助けが必要な人」へ向けた新しいサービスの可能性を示したかった、と語っている。

ブカレストの地下世界

Photo from biancoshock.com

http://www.balkaninsight.com/en/file/show/Images/undergound2.jpg

ところで冒頭に挙げた作品「BORDERLIFE」のインスピレーションの素となったものは、ルーマニアの首都、ブカレストに広がる地下世界だ。ルーマニアのマンホールの底。下水道の中には「マンホール・チルドレン」と呼ばれる600人以上もの人が暮らしている。

彼らの多くは共産主義時代、チャウシェスク政権の下に生まれた。時の政権は「国力とはすなわち人口なり」と、たくさんの子どもを生んだものに奨学金を与える政策を行い、さらには堕胎も政策で禁止するなどし、人口を倍増させた。

しかし政権崩壊後、約束された金銭が与えられることはなくなり、多くの子ども達が路上に生活せざるを得なくなった。食事も満足にありつけない彼らはドラッグで空腹を紛らわし、ほとんど唯一の仕事であるセックスワークによって日々をやりすごしている。マンホールの底の住人は全員がHIV感染者であり、4分の1が結核であると言われている。

過酷な状況に置かれた時こそ、ユーモアを。

ビアンコショックは「BORDERLIFE」についてこのように語っている。

「もしも避けようの無い問題にぶち当たったとしたら?それを快適な形に作りかえてしまうことだ。」

難しい問題や目を覆いたくなる現実の前に、私達は自分自身への無力感を他人への怒りへとすり替えてしまうことがしばしばある。自分ではどうしても解決できない目障りな問題について、関心を持った他人が解決すべきものとして関係者を責め立てる。しかしアーティストは怒りを他人へ向けることも自分の無力を嘆くこともなく、ただ現実と向き合う視点を提示し続ける。難しい問題に関心を持ち続けることほど骨の折れることはない。だからこそ、ユーモアの力が必要なのではないだろうか。

恐ろしく酷い状況に追い込まれたとしても、すぐに悲観する必要はない。自分自身を笑い飛ばすユーモアと主体的に状況を作り変える創造性さえ失わなければ、快適に暮らすことができるかもしれないからだ。例えそこがマンホールの底だったとしても。

Bianco Shock
http://www.biancoshock.com/

ルーマニアのマンホール・チルドレン
Wikipedia

Writer: Hiroshi Yoshida

 
 

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