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日本版「プラダを着た悪魔」が「エシカル」 に恋したワケ

PEOPLE

Photo by Koichi Ogasawara

「有名女性ファッション誌 編集長」

この肩書きを聞いて、あなたはどんな人物を思い描くだろうか?

高級なブランド服をクローゼットにしまいきれないくらい大量に持ち、毎日華やかなパーティーに出席。
知性とセンスを兼ね備えた「誰もが羨むような強い女性」。
映画『プラダを着た悪魔』で”悪魔”として描かれた「敏腕編集長」の姿を思い浮かべる人も多いのではないだろうか?

そんな”悪魔”。実は日本に“リアル”に存在する。

最先端のスタイリッシュなファッションに洗練された立ち振る舞い、そして独自の視点と知性を兼ね備えた「凛としたブレない思想」
ただ、日本版”悪魔”には、映画で描かれていた“悪魔”と徹底的に違う点がある。

彼女は「プラダ」ではなく、「エシカル」を着た”悪魔”なのだ。

「エシカル(ethical)」という言葉。エシカル・ファッションやエシカル消費、さらにはエシカル・インベスト メントなど、環境や社会に配慮した「倫理的に正しいこと/もの/行動」に対して使用される機会が増えるようになった。

みなさんは、この言葉にどんなイメージをお持ちだろうか?

NPO、NGO、ボランティア、社会貢献、エコ。
「社会的に正しいのは知ってるけど、なんか少し地味だしとっつきにくい・・・」

「エシカル」から連想される社会一般的なイメージは、おそらくそんなところかもしれない。悪くいえば「少し地味」。
しかしそんなエシカルのイメージが今、全く新しく生まれ変わろうとしているようなのだ。

仕掛け人は、ファッション誌『VOGUE』『ELLE』の副編集長を経て、『マリ・クレール日本版』編集長に就任。
現在はファッション・ジャーナリス トとして世界的に活躍する、生駒芳子(いこま よしこ)さんだ。

わたしが”悪魔”になったワケ

Photo by Koichi Ogasawara

「『プラダを着た悪魔』で描かれる”悪魔”はいわば、ファッションが大好きな、物欲に翻弄されている人の象徴ですよね」

華やかなファッション業界の一戦で活躍し続ける経験からそう語る生駒さんが、一体なぜ「プラダ」ではなく、地味なイメージがつきまとう「エシカル」を着た”悪魔”になったのか?
そのきっかけは、1990年に行われたパリ・ミラノコレクションに遡る。

春と秋に行われるパリ、ミラノコレクションは、コートやブーツが必要な寒い時期だったのが、2000年近い頃からは、そのコレクションは、両都市ともに「汗が吹き出るほどの暑さだった」と語る彼女。
その時自身の肌で、地球温暖化による気候変動を実感し「こんなにも地球の環境が変わったのならば、ファッションのあり方も変わるに違いないと直感しました」

2000年超えてしばらくして、セレブの中でも特に徹底的に「エシカル」を貫く、ビートルズ、ポール・マッカートニーの娘であり世界的ファッションデザイナー、ステラ・マッカートニーのレセプションパーティーに出席し、この「直感」が「確信」に変わったそうだ。

「ステラのファッションでのレセプションパーティは、本当に衝撃的でした。従来のシャンパンや高級酒に溢れるファッション業界のはパーティーとは全く異なるアプローチだったんです!

彼女は、ハーブティーやオーガニッククッキーでゲストをもてなすという、その当時としては本当に奇抜なアイディアを採用していました。
この時に、ステラの提案するエアリーでナチュラルな「心身ともに解放されるファッション」、そしてそれに付随するゲストのもてなし方という、ファッションだけではなくライフスタイル全体に対してエシカルを提案するコンセプトに衝撃を受けました」

「エシカルを着た”悪魔”」が発信。「世界を変える」ショッッピングの方法

Photo by Thomas Hawk from Flickr

そんなパリ・ミラノコレクションで受けた「直感」を「確信」へと変え、自身のライフスタイルの核として「エシカル」の思想を実行し発信するようになった彼女は「エシカルは、ライフスタイル全体に貫けるもの」であると話す。

「従来のエコや社会貢献などの『”断片的”な思想』ではなくて、エシカルは 『ライフスタイル全体に貫くことができる思想』です。
私自身、『エシカル』という考え方を生活に取り入れてから、自然と毎日買うものを真剣に選ぶようになりました」

良い企業の良い志で作ったものしか買いたくない。

そんな信念で真剣に「自分の消費」に向き合う彼女の行動は、一つひとつの「消費行為」が「販売する企業」を支えていることを考えれば当然のことかもしれない。
しかし、「消費」が当たり前になった私たちの生活では、そんな考え方は忘れられがちだ。

ショッピングは投票です。

私はこれを『バイコット』と呼んでいるんですけど、一人ひとりがショピングを通してその企業を応援しているという意識を持てば、ショッピングで世界を変えることができる。私はそう信じているんです」

一人ひとりの「消費への意識」が今よりも少しだけ変わるだけで「ショッピング」という物欲の象徴のような行為が「世界を変える方法」になる。
生駒さんがこの方法を信じ、日本でエシカルの考えを発信し続ける背景には、日本に大昔から存在していた「エシカル精神」があるそうだ。

エシカル精神の国、ニッポン?

Photo by Koichi Ogasawara

「買い手よし、売り手よし、世間よし」

生駒さんが教えてくれたこの言葉。
買う人にも、売る人にも、社会にも。その商品や行動に関わる全ての人々が「Win-Win-Winの関係」になれるような倫理的思想だ。
まさに「エシカル」を体現するようなこの言葉は、江戸時代に活躍した近江商人の活動の理念を表わす言葉なのだそうだ。

「日本はもともと質素な国。今は海外の先進国に比べるとまだまだエシカルの思想は広まっていないけれど、日本人にはもともと「エシカルのDNA」が組み込まれているんです。
日本でいったん「エシカルの火」がつけば、瞬く間に広まる。そう信じて、私は活動を続けています」

「スリリング・エシカル」で、「“みんなが欲しい”エシカル」に。

Photo by Koichi Ogasawara

そんな彼女が抱く日本の「エシカルの未来」は、破天荒でエキサイティングだ。

「すっごくセクシーな下着を、エシカルに作ったらおもしろいよね!」

そんなファンキーな発言からも読み取れるように、彼女は今後「地味なエシカル」に興味のない「ワル」を取り込むため、「スリリングなエシカル」を発信していきたいという。

「エシカルだからっていう理由で”消費”を押し付けても、継続的に消費者は買ってくれないんです。カッコイイもの、素敵なもの、スリリングなもの、エキサイティングなもの。『ものとして良いもの』じゃないと、マーケットで勝ち残れないと思っています」

世間一般が持つ「エシカル」のイメージを根本的に変えることで、全く興味のなかった人を取り込んでいく。

スリリングで、エキサイティングでセクシー。

そんなエシカルに無関心の人でも「共感できる要素」がたくさん詰まった「スリリング・エシカル」のアイディアは、「地味なエシカル」とは真逆にいた、彼女ならではの発想だ。

「逆から入るエシカル」で、歴史に残るムーブメントを!

Photo by Agustin Rafael Reyes from Flickr

「明治維新が今の日本を創る転換点になったように。100年後に日本の歴史を振り返ったときに、このエシカルの活動があったから私たちの人生はこうなっているんだ、と思ってもらえるような。そんな意味のある活動にしていきたい」

そう話す生駒さんのエシカルは、「ただ社会的に良い」。そんな従来の考え方とは真逆をいく「エキサイティングでクール。だけど”結果的”に社会的に良い」

そんな「逆から入るエシカル」をコンセプトとしているのかもしれない。

「かっこいいから買った、楽しそうだから参加してみた、魅力的だから続けてみた」
そんな消費者が日本でもっと増えるように。

「世界一社会に優しい“悪魔”」が仕掛ける“トラップ”は、彼女の野望通り確実に100年後の歴史に残る、社会的ムーブメントになっていくに違いない。

Writer: Yuka Takahashi

from BeInspired!

 
 

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