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近未来型、デジタル移動遊園地

MOVEMENT

「STEAM Carnival」。西海岸で生まれた、すべてが“最先端の手づくり”の遊園地だ。

「テクノロジーとエンジニアリングは、次世代のロックンロールなのさ!」と、とあるインタビュー動画の中で一人の男がいう。

その隣にはモヒカンをぶんぶん揺らして頷く男。

そのロックンロール魂を見せるごとく、「右向け右!」の号令で左を向き、決めつけられた常識を壊して新しい可能性を見つけてきた。

彼らが生みだしたのは、テクノロジーと融合した新しい移動遊園地。これまでにない“伝統的革新”の風を巻き上げて凱旋中だ。

今、テクノロジーによってデジタルの世界に血を通わせ、人々を最高にエキサイトさせている。ロックの神様が、かつてあのステージを沸かせたように。

楽しいことにひどく受動的になってはいないだろうか。

そんな懸念を撃滅するかのごとく、デジタル世代の遊園地「STEAM Carnival」を引っさげて現れたのが前述のモヒカン男、エリック・グラッドマンと相棒ブレント・ブッシュネル。ロサンゼルスの“秘密組織”を自称する集団『Two Bit Circus(以下、TBC)』の立ち上げ人だ。

「STEAM Carnival」は、最新デジタルテクノロジーを使った遊具を一つのテントの下に集めた現代版「カーニバル」(移動遊園地)。TBCがゲームの企画立案から開発、演出、パフォーマンスまで行う。

ブレントはコンピュータ・サイエンスの専門家で、携帯ゲーム制作会社を皮切りにいくつものゲーム関連会社を起こしている。

相方のエリックは、モヒカンがトレードマークの元サーカス芸人でありながらロボット工学の専門家で、 軍事用ロボットや人工衛星制御システムの開発にあたってきた。二人は、金のための設計やアルゴリズムに辟易していた頃、参加した“科学オタクの飲み”にて知り合い意気投合。「楽しいこと、面白いことだけをやる」をモットーに独立し、同社を設立した。

“遊び”は人間とテクノロジーをつなぐ

「自由に人が描いた模様に反応して、コンピュータでつくったオブジェクトが動くゲームをつくって、パーティー会場に置いてみたんだ。すると、みんなが勝手にゲームをはじめたんだ」とエリック。

「遊びこそテクノロジーと人をつなげる方法」だとひらめく、最初のヒントとなった。その後もゲームの開発を続けるが大失敗。

「複雑すぎたんだ。シンプルでとっつきやすいこと、それがミソなんだ」。散々失敗をして辿り着いたのは「移動遊園地」。「そうだ、移動遊園地の遊びはシンプルだ。それにみんなで楽しめる。それを最新技術でつくり直そう」。彼らが培ってきた技術、ノウハウとアイデアが化学反応を起こした瞬間だった。

「STEAM Carnival」には昔ながらのゲームが並ぶ。二人のプレイヤーが壁にかけられた「赤」「青」、2色のボタン群をコンピュータの指示に従って争奪する「垂直ツイスター」は、時に複雑に体が絡み大乱戦に発展する。

「レーザ ービーム迷路」は縦横に張り巡らしたビームに当たらないようにくぐり抜けるだけの単純なゲームも開発した。「相当盛り上がるよ。特に女の子と知り合うには絶好のゲーム」と得意満面に笑みを浮かべるブレント。

彼らが開発したゲームのすべてに最先端技術が施されている。「looks familiar, but new(知ってるけど、新しい)」。昔馴染みの遊園地を、火、高電圧、レーザービームをテーマに、テクノロジーで革新したのだ。子どもの頃に体験したゲームが、新しい感覚を伴って戻ってくる。だからこそ現代の子どもも大人も夢中になる。

この「誰もが楽しめるテクノロジー」こそ、彼らのモットーだ。レーザーや炎が自分のアクションに応じて動いたりと、デジタルと体が現実世界で呼応することを感じる。

たとえば、ゲーム「ハイストライカー」は、ハンマーで棒を叩くと光が上に伸びていくのだが、このセンサーの仕組みは携帯電話に使われているものと同じだという。身近な技術を、遊びの中で知らず知らず体感することになる。

新しい可能性の発見

「次世代の子どもたちの“サイエンスの感覚”を養いたい」と二人はいう。この遊園地の“大義”でもある。米国の子どもたちの間で、STEMとよばれるScience(科学)、Technology(テクノロジー)、Engineering(エンジニアリン グ)、Mathematics(数学)分野への興味は年々薄れていっているという。

その手の分野に進む生徒が減少し続け、卒業生に対して圧倒的に仕事があり余っている現状がある。

「そこでArt(創造性)をプラスして僕らは『STEAM』 にした。つくる楽しさ、つくることが可能だと『遊び』を通して感じて欲しい。学校で習う公式や理論だけが科学じゃない。こんなに面白い科学もある。その感性を子どものときに養うのさ」

次世代に託すロックンロール精神

アトラクションでテクノロジーを“体感”することで、その技術は一気に現実味をおびてくる。指先で画面の中の“主人公”をコントロールするのではなく、 自身の体を動かしてクリアする感覚は、テクノロジーを“肌”で感じるということだ。

彼らは、バーチャル世界の“Fun(楽しみ)”を、ゲーム、サイエンス、ロボット、あらゆるテクノロジーを駆使して現実世界に持ってくる。そして、テクノロジー理論を、子どもたちの体に感覚的に馴染ませていく。

TBCの最大の利点はポータブルであること。場所さえあればどこでも開催できる。通常の移動遊園地に比べたら運搬も設置も遥かに楽で、運営コストも安い。こうした利便性を活かせば世界中を回ることが可能になる。

そして、人の「温もり」や「つながり」への再認識を生むことができる。災害被災地などでの社会再生、地域の活性化にも一役買うことができるのではないか。 ロックンロール精神の根底は、反骨精神。

「できないことなんてない。現代じゃ、想像できるものは何だってつくれるんだ」。その精神を、遊びと一緒に刷り込まれた子どもたちが大人になったとき、もっともっと面白い遊び場が生まれるだろう。

ここだけのハナシ

Two Bit Circusはゲーム開発と平行して多くのメンバーが米国出身オルタナティブ・ロック・バンド「OK Go」のミュージックビデオも手がけている。

そこで ピタゴラ装置(ドミノ倒しなど最初にきっかけを与えて連鎖的に進行するからくり)をフィーチャーした 『This Too Shall Pass』のビデオは「驚異のワンカット映像」としてネット上で爆発的ヒットとなり、日本でも話題に。

「クレイジーきわまりないビデオだよ。でも予想外だったのは、あの影響で理系への関心が高まった」とエリックはいう。「『あの装置を是非うちの学校でも実演して下さい』って要望が殺到したんだ」、とブレントが続けた。ここでも科学の知識とセンスが十分に発揮された。

Edited by HEAPS media
Writer: Nakamura Hideo / Sako Hirano
Photos by Two Bit Circus

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