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Airbnbがつくる「弱くて強いつながり」

TECH

Photo by Takashi Horinouchi

LA からの迷い人

筆者が名古屋で運営するコワーキングは、Airbnb を併設している。
そこにLAから予期せぬゲストがやってきたのは、2014年の10月のことだった。
アメリカ人というと白人を想像するのは悪い癖で、来たのは完全に見た目が日本人のマイクという青年だった。

ニホンゴハスコシダケ。

ここで初めて知ったのだが、名古屋とLAは姉妹都市らしく(LAに名古屋ロードなるものがある)、ちょうど50周年を迎える古い関係らしい。マイクはアーティストをしながら名古屋との姉妹都市協会の一員として活動している。

どこにでもある話だが、50年も協会をやっていれば中心はご高齢の方ばかりで新しい提案は全く受け付けてくれないという。「そんなに言うなら、自分が現地に行って協力してくれる仲間を見つけてこい」と言われてここを見つけたようだ。ロックじゃないか。

Photo by Takashi Horinouchi

一夜で生まれるプロジェクト

LAから来たマイクはVR(仮想現実)に興味を持っていた。

かの有名なハリウッドがあるLA、映像では世界一といっても過言ではない。
かたや名古屋にはプログラマーはいるしコスプレ世界一を決める世界コスプレサミットがあるくらいコスプレ文化が強いが、映像関係はなかなか強いとは言い難い。

じゃあ、せっかく姉妹都市なんだから、協力してなにか一緒にやらないかという話で盛り上がった。
2015年4月にサンフランシスコでSAMUSUNG主催の賞金総額1億円のコンテストがあるという。ある一夜のうちに、思いもよらないかたちでこの大きなプロジェクトは動き出したのだった。

Photo by Takashi Horinouchi

VFX + コスプレ + ラブホ。異質なつながりの触手を伸ばす

それからは毎朝マイクと集まった。彼はスカイプ経由でフランスの映像スタッフを召喚し、こちらも負けじとスチームパンクが得意なコスプレイヤー、特殊メイクを召喚。

お互い足りないピースを埋め合うように人を集め、気がつけば30人の大所帯になり、360度動画のコンテンツを制作した。

SFモノのロケ地探しで意外だったのは、彼らが選んだのは古びた工場ではなく、ラブホや居酒屋を選んだことだった。ブレードランナーしかり、日本の怪しげな街の風景こそが彼らにとって古き良きSFの舞台なのだ。

スターウォーズのロケ地であるチュニジアの現地人は、観光に来る人たちに「なぜこんな何もないところに」と当惑するらしい。そんなものなのだろう。

いつもの仕事の納品前とは違う、文化祭の前のような1ヶ月ののち完成した作品は無事提出され、もっとも多国籍なチームとして取り上げられた。賞は逃したものの、彼らからアメリカで先行して販売されているガジェットを仕入れてもらったり、別のプロジェクトを一緒に進めたりしている。

Photo by Takashi Horinouchi

弱いつながりの強さ

社会学者のグラノヴェターの有名な論文で「弱いつながりの強さ」というものがある。
弱い、というのはSNSでいう「共通の友人が少ない」ということだ。

もともとは転職についての調査だったが、共通の友人が少ない、もしくはゼロの関係の人からの紹介のほうが仕事が決まりやすい、という直感に反するような論文だった。Airbnbを通して経験したのは、まさにそういうことだった。全く違う地の異質なコミュニティが一つの目的を共有したとき、新しい絵のパズルが組み上がる。

企業が求めるイノベーションは、フレームワークや思考法ではなく案外こういうロックな偶然が生み出すのかもしれない。世界中で Airbnb は弱いつながりを毎日生んでいる。一宿一飯の礼ではないが、寝食をともにすれば信頼関係は一瞬で築くことも可能だ。

だからあまり仕事にピリピリせず、外国人に門戸を広げて一緒に飯を食いにいく、というのが実はイノベーションにもっとも近いことかもしれない。

Photo by Takashi Horinouchi

Writer: Yasuhiro Takagi

 
 
 
 

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