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現代のアート「人工知能」は人を感動させられるか

TECH

創作活動にも侵食しはじめている人工知能。

これからのクリエイティブ活動のカギを握るのは、人工知能を育てる「キュレーター」?

何の変哲もないSF映画。実は……

20XX年、失業者は街中に溢れ、若者は金を稼ぐために自分の血を売るようになる。そんなディストピアのような時代を背景に、奇抜な衣装を着た男二人と一人の女が登場する。三角関係のもつれか、彼らはつじつまの合わない言い争いする。自殺するために使われたレーザー銃。
自殺者の気持ちを暗示しているのか、部屋の中にはブラックホールが突如出現するーー。

一見すると何の変哲もないSF映画。
劇中で交わされる矛盾した会話からは、B級映画の匂いさえする。
鑑賞後はなにを伝えたかったのかと頭を悩ませ、歯切れの悪い作品として後味の悪い感触も残った。

しかし、これが「人工知能によって作られた映画」と聞いて、映画への関心はネガティブなものからポジティブなものへ、180度変わっていった。

人工知能の脚本家「Benjamin」

人工知能が脚本・作曲を務めた『Sunspring』はロンドンで毎年開催されているSci-fi映画の祭典で初披露された。
同作は、祭典のプログラムの一つである、48時間で短編映画を制作する「SFL 48 Hour Film Challenge 2016」に出展されたものだ。

監督を務めたのは、多くのクリエイターを輩出しているニューヨーク大学の卒業生オスカー・シャープ氏と人工知能作家の「Benjamin」

Benjaminを制作したのは、ニューヨーク大学で人工知能を研究しているロス・グッドウィン氏だ。
Benjaminは入力されたデータの相関性を、時系列で見つけるリカレントニューラルネットワークによってつくられた。

生みの親である、グッドウィン氏はこの新人Sci-fi作家を育てるため、手始めに1980年代から1990年代のSci-fi映画を読み込ませた。
「ゴーストバスターズ」や「2001年宇宙の旅」などの過去の名作を学習したBenjaminは、共通する要素をもとに、独自のアルゴリズムを構成し、それをSunspringのプロットに落とし込んでいる。

新生のごとく現れたこの人工知能作家は、自身を「Benjamin」と名乗り、わずか数時間で登場人物のセリフから配置、小道具まで、プロットの全てを一枚の用紙に事細かに記録した

そして、”相棒”のシャープ氏はそれをもとに、キャストの割り当てや舞台の手配など行ったという。

Sunspringは、優勝には至らなかったものの、100作品者エントリーの中から見事トップテン入りを果たしたそうだ。

満点ではないが、まずまずの結果だろう。

人工知能は「天は二物を与えず」という定説を覆す

Photo by Janae Juhala from Flickr

これまで人工知能(機械学習)は、機械的で決められた法則に則った動きにだけその性能を発揮しており、ルーチンワークのような仕事を代替してきた。

その一方で、発想力や独創性が求められる仕事は苦手と考えられていた。

つまり、”クリエイティブな活動”こそ人間にしかできない”最後の砦”とされていたのだ。

しかし、このBenjaminのように、人工知能はクリエイティブな仕事にまでも、能力を発揮し始めている。大衆を魅了するような絵を描き、たったの15分で有名作曲家さえも驚くような協奏曲を生み出してしまう。

人工知能は人間の何倍もの速さで、一定の法則を見出し、共通点を抽出する。

そしてそれらを統合し、”大衆受け”するクリエイティブな作品を生み出すことができるのだ。

これだけ聞くと、もはや人間ができることは無いのではないか、と悲観したくなるだろう。

しかし、それは少々早とちりな考えだ。

人工知能を正しい方向へと導く「キュレーター」の重要性

Photo by Cade Roster from Flickr

人工知能が良質な作品を生み出すには、参照元となる良質な情報のインプットが重要となる。仮にそのインプットがゴミのようなものであれば、人工知能の性能がいくら向上したとしても、優れた作品は生まれない。

幸いなことに、”現時点では”このインプットは人間にしかできない仕事だ。

つまり、インプットする情報を適切に選定できるような、専門分野の「キュレーター」のような仕事こそ、今後ますます求められのではないか、と筆者は考えている。

Benjaminも48時間という制約のなかで、不完全ながらも一つのSF映画を生み出した。

これは、生みの親であるシャープ氏とグッドウィン氏が、過去の名作SF映画を選定し、良質なインプットをしたことが大きな要因だったと言える。

最初のインプットは人間が行い、それに続くアウトプットは人工知能が行う。

このようなサイクルは、人工知能とクリエイティブの領域を目覚ましい速度で発展させていくに違いない。

Writer: Miho Inoue

 
 

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